乳腺腫瘍

犬と猫の乳腺腫瘍について┃避妊手術で発症の確率を軽減

乳腺腫瘍とは乳腺の組織の一部が腫瘍化してしこりができる病気のことです。犬の乳腺腫瘍は、しこりの大きさが小さいうちは良性であることが多いですが、大きくなると悪性のものも増えてきます。一方で猫の悪性腫瘍はサイズに関わらず、80〜90%が悪性であると言われており、注意が必要です。

このページでは、犬と猫の乳腺腫瘍の原因や症状、治療法などを詳しく解説します。

原因

性ホルモン、特にエストロジェンが乳腺の細胞増殖に影響を与えることが知られており、これが腫瘍の発生に関与しているといわれております。
そのため、初回発情を迎える前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率を大きく下げることができます

具体的には、避妊手術をしていないメス犬では約20〜30%程度の確率で乳腺腫瘍が発生しますが、初回発情を迎える前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率は 0.5〜1%程度に抑えることができます

猫においては1歳を迎えるまでに避妊手術を実施することで乳腺腫瘍の発生率を約80〜90%低下させることができます

症状

乳腺腫瘍は乳腺に「しこり」ができるのが一般的な症状です。
しこりができる数は1つだけとは限らず、胸部や腋窩(脇の下付近)、下腹部、内股までの乳腺に複数しこりができる場合もあります。

悪性腫瘍(乳癌)の場合、腫瘍は増殖し血管やリンパを通じて肺や肝臓など他の組織に転移する心配があります。
さらに、腫瘍が大きくなって皮膚が自壊(皮膚が破けて出血や壊死を起こす)すると、痛みや違和感が生じることがあります。

診断方法

視診や触診で乳腺のしこりを見つけた場合は、乳腺腫瘍を第一に疑い検査を進めます。

まずは細い針をしこりに刺して、しこりの細胞の一部を採取します。(=細胞診検査)
細胞診検査で乳腺腫瘍を疑う所見が見られれば、乳腺腫瘍のステージ分類や手術可能かどうか、全身臓器に転移が見られないかを判断するために追加で以下の検査を実施します。

周囲の組織との関係(固着しているかどうかなど)
所属リンパ節への転移がないか、触診でリンパ節を評価する
レントゲン検査 (肺などへ転移していないか評価する)
血液検査 (全身状態の評価や手術可能かどうか評価する)

治療方法

犬猫ともに乳腺腫瘍の治療は外科的切除が基本となります。
犬は比較的治療予後が良いですが、猫は早期に治療しないと再発と転移を起こすため要注意です。乳腺を切除する範囲は、腫瘍の大きさや、場所によって異なります。小さな単発の腫瘍の場合、局所的な切除で対応できます。大きな腫瘍や多発している場合は、広範囲にまとめて切除することになります。

摘出した腫瘍は病理検査に回し、良性・悪性の判断と適切に取り切れているかを評価します。


犬の乳腺腫瘍
早期の小さい単発の腫瘍は小さな切開(円の部分)のみで切除可能です。早期の手術は小さな負担で済みます。

多発している犬の乳腺腫瘍
大きな腫瘍が多発している場合、大きくまとめて切除する必要があります。(楕円の領域)

予防法やご家庭での注意点

乳腺腫瘍の効果的な予防法は、初回の発情が起こる前(おおよそ半年から1歳未満)に避妊手術を実施することが何よりも大切です。
乳腺腫瘍は動物では数少ない予防可能な腫瘍と言えるため、繁殖の予定がないのであれば避妊手術を受けましょう。

また、ご家庭では日頃からよくお腹を触って、しこりができた場合にすぐに気づけるようにしておきましょう

当院の避妊手術については外科手術のページでも解説しています

まとめ

乳腺腫瘍は中〜高齢期の犬猫に多く発生し、治療が遅れて全身に転移してしまう場合や炎症性乳癌 (極めて悪性度の高い乳腺腫瘍)は極めて予後が悪い深刻な疾患です。

一方で、避妊手術で予防できる上に、早期発見・早期治療を行えば良好な予後が期待できるため、定期的に動物病院で健康診断を受け、乳腺に何かしこりを発見した場合は速やかに獣医師に相談するようにしてください。

兵庫県尼崎市と伊丹市との境目、塚口にある動物病院 「しろうま動物病院」
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