肺炎
「カハッ」とした咳が毎日続く、呼吸が速い、呼吸が荒い――
そのような変化があると、飼い主様は心配になることでしょう。
咳や呼吸の異常がみられるときは、気管支炎や心臓病だけでなく、肺炎が関係していることもあります。
このページでは、犬と猫それぞれの肺炎で考えられる主な原因、みられやすい症状、動物病院で行う検査・治療、ご家庭で気をつけたいポイントまでわかりやすくお伝えします。
肺炎とは、肺に炎症が広がってしまう病気です。
ただし、肺炎を起こしやすいきっかけや目立ちやすい症状には、犬と猫で違いがみられることもあります。
犬では、細菌感染をきっかけに肺炎を起こすケースが比較的多いのが特徴です。気管支炎などの呼吸器感染が悪化すると、炎症が肺まで広がる恐れがあります。
また、体力や免疫力が落ちているときは重症化しやすく、子犬ではケンネルコフ(犬感染性気管気管支炎)などの呼吸器感染が肺炎へ進行することもあるため、注意が必要です。
一方、猫ではウイルスや細菌による感染症が主な背景となります。上部気道の炎症が肺にまで及び、重症化に至るケースも少なくありません。
猫は犬に比べて咳が目立ちにくく、「元気がなさそうなだけ」と見逃されることもあるため、細かな観察を大切にしてください。
とくに注意したいタイプの「誤嚥性肺炎」は、食べ物や唾液、吐いた内容物などが気道に入ってしまい、肺に炎症を起こすタイプの肺炎です。
シニア期の犬や猫、巨大食道症など食道に異常がある場合、吐き戻しや嘔吐をくり返している場合には、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。 また、強制給餌や薬を飲ませる方法が引き金になることもあります。
誤嚥性肺炎は犬で多く報告されますが、猫でも発生します。どちらの飼い主様も注意が必要です。
▶犬の気管支炎についてはこちらで解説しています
▶猫のウイルス性鼻気管炎についてはこちらで解説しています
肺炎でみられる症状としてまず気づきやすいのが「カハッ」「ゴホッ」という咳です。
ただし、症状は咳だけに限りません。
以下のように、呼吸の異常から全身状態の変化として現れることもあります。
・呼吸が速い、荒い
・なんとなく元気がない
・食欲が落ちる
・発熱する
仮に「咳はあるけれど元気はある」「食事も普段通り食べている」という段階でも、肺炎の可能性がゼロではありません。軽い咳が出始めた段階で動物病院に相談できると、重症化する前に治療ができます。
さらに症状が悪化して、このような症状がみられたときは、早めに受診しましょう。
・毎日咳き込む
・安静時にも呼吸が速い
・夜間や明け方に咳が増える
・苦しそうに口を開けて呼吸する
・ぐったりする
受診前には、以下の点を確認しておくと診断がスムーズです。
✔ 咳の回数が増えていないか
✔ 安静にしているときも呼吸が速くないか
✔ 眠れているか
✔ 食べたり飲んだりしづらそうにしていないか
呼吸器の不調は、少しずつ悪化したり急に苦しくなったりすることがあるため、小さな変化にも気付けるのが理想です。
肺炎の診断は、咳などの症状のみで判断しません。
飼い主様からの問診にくわえ、身体検査や聴診で呼吸音を確認し、呼吸の速さや深さ、呼吸がどの程度つらそうかを丁寧にみていきます。
そのうえで重要になるのが画像検査です。
レントゲン検査では、肺に白い影や曇ったような変化が出ていないかを確認します。変化が出ている場所によっては、誤嚥性肺炎を疑う手がかりになることもあります。
ただし、レントゲン検査だけで原因まで断定できるとは限りません。
血液検査も、肺炎の診断を進めるうえで大切です。 白血球数を確認することで、炎症や感染の存在を把握できます。
また、炎症の程度をみる参考として、犬ではCRP、猫ではSAAといった数値の上昇を確認します。こうした数値は、現在の状態を把握し、治療後の変化を追う際にも役立ちます。
さらに詳しく原因を調べたい場合には、下気道の状態を詳しく確認する検査を行うことがあります。
たとえば、気管支鏡検査や気管支洗浄(BAL)によって気道の状態をより詳しく確認し、炎症や感染の有無、どんな治療が合っているかを判断する手がかりにします。
このように、肺炎の診断では、飼い主様からの問診に加え、視診・聴診・レントゲン検査・血液検査などを組み合わせながら、原因を丁寧に探っていきます。
当院では、呼吸器症状に対して幅広い検査の選択肢をもち、一頭一頭に応じて必要な検査を適切に組み合わせながら診断を進めています。
体全体の様子を見ながら、循環器の視点も取り入れて、咳や呼吸の変化を肺だけの問題と決めつけず、背景にある原因を丁寧に見極めることを大切にしています。
▶当院の検査機器についてはこちら
肺炎の治療は、状態や原因に応じて、以下のような治療を選択していきます。
・細菌感染:抗菌剤(抗生物質)
・気道の炎症が強い:抗炎症薬
・気道が狭くなっている:気管を広げる薬
・呼吸が苦しい:酸素管理や入院での全身管理
・誤嚥性肺炎:誤嚥の原因へアプローチ(消化器・食道への対応、食事や投薬の工夫など)
肺炎では、今出ている症状を抑えるだけでなく、再び起こさないための対応まで含めて考えることが大切です。
また、犬と猫では体の大きさや呼吸器の特徴、背景にある感染症や基礎疾患が異なります。肺炎の治療といっても全て同じではなく、それぞれの状態に合わせた選択が必要です。
ご家庭でまず意識していただきたいのは「咳が続いている」「呼吸がいつもより速い」と感じた時点で、できるだけ早く相談することです。
犬や猫の肺炎は、初期には軽い咳にみえても、進行すると全身状態に影響することがあります。
夜間や休日の場合でも、呼吸の異常が強いときは様子見を続けるのではなく、かかりつけ医や救急の動物病院に連絡して判断を仰いでください。
可能であれば、症状の動画を撮ったり、咳が出る時間帯や回数を記録したりすると、受診時の大切な手がかりになります。
また、自宅では無理に食事や水を与えようとせず、なるべく安静に過ごさせてください。
呼吸がつらいときは、食べたり飲んだりすること自体が負担になる場合もあります。
室内ではタバコの煙や強い香り、ほこりなどの刺激を避け、できるだけ静かで落ち着ける環境を保つことも大切です。
一時的に良くなったように感じても、処方されたお薬は自己判断で中止せず続けてください。気になることがあれば小さな変化でもかかりつけ医に相談するようにしましょう。
肺炎は、見た目には同じような咳や呼吸の異常でも、原因によって必要な検査も治療も異なります。
はじめは軽い咳のようにみえても、あとから呼吸のつらさや体調の変化につながる恐れもあるため、早めの確認が安心につながります。
しろうま動物病院では、呼吸器の症状を肺だけの問題と決めつけず、循環器を含めた全身の視点から丁寧に評価し、その子に本当に必要な検査・治療を一緒に考えていきます。
咳や呼吸の変化に気づいたときは、重症化する前にお気軽にご相談ください。
■関連する病気はこちらで解説しています
・犬と猫の咳と呼吸の異常について|喉、肺、心臓、感染症など
・犬の気管虚脱について|犬の咳、のどに物が詰まった様に見える
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