膀胱炎
寒くなる季節、愛犬や愛猫がトイレに何度も行くようになったり、おしっこに血が混じっていたりして驚いたことはないでしょうか。
「いつもとおしっこの様子が違うな」と感じたら、それは膀胱炎のサインかもしれません。
膀胱炎は、冬場に発症しやすい病気のひとつです。気温が下がると寒くてトイレに行くのを我慢したり、水を飲む量が減ったりすることが増えます。
こうした変化が膀胱に負担をかけ、炎症を引き起こしやすくなるのです。
この記事では、犬と猫それぞれの膀胱炎の特徴から、気づきやすい症状、診断方法、治療のアプローチまで、わかりやすくお伝えします。
膀胱炎と一口に言っても、犬と猫では発症の仕組みが違います。まずは、それぞれの特徴を確認しましょう。
犬の膀胱炎は、細菌の侵入がきっかけとなることがほとんどです。
尿道から細菌が入り込み、膀胱の中で増殖することで炎症が起こります。
散歩中の排尿後、陰部周辺に汚れが付着したままになっていると、そこから細菌が侵入することもあります。日頃から清潔を保つことを意識してください。
特に注意が必要なのは、高齢犬やメス犬です。
シニアの犬は免疫力が低下したり、ホルモンバランスの変化で尿道周辺の防御機能が弱まったりするため、感染リスクが高まります。
メス犬は尿道が短く、細菌が膀胱まで到達しやすい身体学的な構造になっています。
猫の場合、膀胱炎の原因は犬よりもやや複雑です。細菌感染が原因の場合もありますが、犬に比べると割合は低めです。
細菌感染によるものもありますが、特発性膀胱炎と呼ばれる、はっきりとした原因がわからないタイプが多く見られるのが特徴です。
特に若い猫で特発性膀胱炎の割合が高くなる傾向があります。
特発性膀胱炎は、ストレスが大きな引き金になると考えられています。
環境の変化、引っ越し、来客、同居猫との関係悪化、大きな騒音、トイレが汚れている、多頭飼育での順位争いなど、猫にとってストレスとなる要因はさまざまです。
猫はとても繊細な動物であり、人間には些細に思える変化でも、猫にとっては大きなストレスになり得ます。そのストレスが膀胱の炎症を引き起こし、血尿や頻尿といった症状につながるのです。
膀胱炎になると、以下のような症状が現れます。
飼い主様が気づきやすいサインも多いので、日頃から注意して観察していきましょう。
トイレに何度も行くのに、尿が少しずつしか出ないというのが典型的な症状です。
膀胱が炎症を起こして敏感になり、少し尿がたまっただけで「出さなきゃ」という感覚や不快感が起こるためと考えられます。
猫の場合「トイレに入ったり出たりを繰り返す」「いつもより長くトイレにいる」といった行動が見られます。
犬の場合は「散歩中に何度もしゃがむ」「家の中でもソワソワしてトイレに行きたがる」などの様子が見られることが多いです。
排尿のときに痛みを感じるため、キャッと鳴いたり、体を丸めたり、排尿姿勢のまま固まったりすることがあります。トイレの後も落ち着かず、陰部を気にして舐め続けることもあります。
いつもと違う様子で排尿しているなと感じたら、注意が必要です。
尿に血が混じるのも、膀胱炎の代表的な症状です。鮮やかな赤色からうっすらピンク色まで、血の混じり方には幅があります。
白いトイレシートや猫砂を使っていると気づきやすいので、心配な方はできれば色の濃いものより明るい色のものを使うことをおすすめします。
吐き気がある、元気がない、食欲が落ちている、ぐったりしているといった全身症状が見られる場合は、すぐに受診してください。
膀胱炎が悪化して腎臓に影響が出ている可能性があります。
また、「少し様子を見ていたら治るかも……」と思われる飼い主様もいらっしゃいますが、膀胱炎が自然に治るケースはまれです。
特にオス猫で「トイレに何度も行くのに尿が出ない」場合、尿道閉塞という病気かもしれません。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
尿道に結石や結晶が詰まって尿が出せなくなると、数時間〜数日で命に関わる状態になります。膀胱炎と症状が似ているため、見分けがつきにくいのが怖いところです。
夜間や休日であっても、夜間救急病院など緊急対応してくれる病院を探して受診することをおすすめします。
膀胱炎かどうか、そしてその原因は何かを正確に診断するために、いくつかの検査を行います。
まず行うのが尿検査です。尿の中に血液や炎症細胞、細菌、結晶などが含まれていないかを顕微鏡や専用のキットでチェックします。尿のpH(酸性・アルカリ性)や比重なども測定し、膀胱の状態を総合的に評価します。
細菌感染が疑われる場合は、細菌培養検査を追加で行うこともあります。どんな細菌がいるのか、どの抗生物質が効くのかを調べることで、より的確な治療ができるようになります。
レントゲンでは、膀胱の大きさや形、尿石の有無を確認します。
特に結石がある場合、レントゲンで白く写ることが多いため、発見の手がかりになります。ただし、すべての結石がレントゲンに写るわけではないので、次の超音波検査と組み合わせることが大切です。
超音波検査では、膀胱の壁の厚さや内部の状態をより詳しく観察できます。
レントゲンに写らないタイプの結石や、腫瘍の有無なども確認可能です。
痛みもなく、短時間で終わる検査なので、犬や猫にとっても負担が少ないのが利点です。
膀胱炎の治療は、犬か猫か、そして原因によって治療方針が変わります。
犬の膀胱炎は細菌感染が中心なので、適切な抗生物質を選ぶことが重要です。
一方、猫の特発性膀胱炎では細菌が関与していないことが多く、抗生物質だけでは改善しないケースもあります。
細菌が原因の膀胱炎には、抗生物質の投与が基本です。尿検査や培養検査の結果をもとに、効果的な抗菌薬を選んで使います。
犬の場合は比較的治りやすい傾向があり、適切な抗生物質を使えば数日から1週間程度で症状が改善することが多いです。ただし、薬を途中でやめてしまうと再発しやすいため、獣医師の指示通りに最後まで飲ませることが大切です。
もし抗生物質で改善しない場合やすぐ再発する場合は、尿石や腫瘍が隠れている可能性があります。その場合は、より詳しい検査が必要になります。
猫の特発性膀胱炎は、残念ながら確実な治療法がまだ確立されていません。
原因がはっきりしないため、症状を和らげながら自然な回復を待つという対処が中心になります。
当院では、症状に応じてステロイド、抗生物質、痛み止めを併用することが多いです。
これらの薬は炎症を抑えたり、痛みを軽減したりする対症療法の目的で使われます。
ただし、特発性膀胱炎の場合は薬だけでは根本的な解決にはならず、ストレス要因の除去が何より重要です。
生活環境を見直し、猫がリラックスできる空間を作る、トイレを清潔に保つ、多頭飼育の場合は猫同士の関係性に配慮するなど、日常的なケアが症状の改善や再発予防のカギを握ります。
膀胱炎の治療や再発予防には、食事の見直しも重要です。
尿のpHやミネラルバランスを整える療法食を使うことで、膀胱への負担を減らし、尿石の形成を防ぐ効果が期待できます。
また、水分をしっかりとることも膀胱炎予防には大切です。特に猫では、ウェットタイプのフード(缶詰やパウチ)を取り入れることで自然に水分摂取量を増やすことができます。
療法食は種類が多く、対応できる結晶のタイプや作用が異なります。自己判断ではなく、必ず獣医師の指導のもとで選ぶようにしましょう。
膀胱炎を早く見つけるには、飼い主様の日々の観察が欠かせません。以下のポイントを意識してみてください。
毎日のトイレタイムを、ぜひ「健康チェック」の習慣にしてください。
✓いつもより回数が多くないか
✓1回あたりの量が少なくなっていないか
✓尿の色がいつもと異ならないか(赤っぽい、濃いなど)
こうした小さな変化に早く気づいてあげることで、重症化する前に対処できる可能性が高まります。
猫の場合、トイレ環境がストレスの原因になることがよくあります。
✓トイレは常に清潔に保つ(1日1回以上の掃除)
✓設置場所は静かで落ち着ける場所に
✓寒い場所にあるなら、暖かい場所へ移動
✓多頭飼育の場合、頭数+1個のトイレを用意
毎日のちょっとした工夫がストレスを和らげ、膀胱炎の予防にもつながります。
犬の場合、散歩中の排尿の様子を観察しましょう。
✓いつもより頻繁にしゃがむ
✓排尿姿勢をとるのに時間がかかる
✓少量ずつしか出ていない
✓排尿後に陰部を気にする
いつもと違う様子が見られたら、膀胱炎のサインである可能性もあります。早めに動物病院で診てもらいましょう。
膀胱炎を早く見つけるには、飼い主様の日々の観察が欠かせません。以下のポイントを意識してみてください。
膀胱炎は、犬にも猫にも起こる身近な病気です。
「自然に治るかもしれない」と様子見をしてしまうことで、症状が悪化するリスクが高まります。
一方で、ちょっとした変化に気づければ苦痛が少なく治療できる病気です。頻繁な排尿や血尿、排尿時の違和感などは、膀胱炎の代表的なサインを見逃さないようにしましょう。
愛犬や愛猫が穏やかに過ごせるように「おかしいな」「おしっこの様子がいつもと違うかも」と感じたときは、ためらわずに受診してあげてください。
しろうま動物病院では、日々の健康チェックから高度な手術、療法食に関するご相談まで、皆様に寄り添いながら丁寧に対応いたします。
■泌尿器に関連する病気はこちらで解説しています
・犬の尿路結石症について|尿路に結石ができる
・猫の尿路結石症について|尿路の閉塞が要注意
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