猫のリンパ腫
リンパ腫とは、リンパ系の細胞が骨髄以外のリンパ器官などの組織で異常に増殖する腫瘍のことです。
わかりやすく言うと、白血球の一種であるリンパ球が異常に増える「血液のがん」です。
猫では特に発症しやすい腫瘍性疾患のひとつで、消化器や胸部、鼻腔、皮膚など、体のさまざまな部位に発生する可能性があります。
初期には目立った症状が出にくく、「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」といった漠然とした変化が最初のサインになることもあります。
このページでは、猫のリンパ腫の原因や症状、診断方法、治療法、そしてご家庭での注意点について詳しく解説します。
猫のリンパ腫は、特定のウイルス感染が原因になるものと、ウイルス感染に関係なく発病するものとがあります。
猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫は、そうでない猫に比べて約60倍も発症しやすいと言われており、さらに「猫免疫不全ウイルス(FIV)」の陽性猫も、発症リスクが約5倍に高まるとされています。
ウイルス感染以外の原因としては全ては解明されていませんが、遺伝やタバコの受動喫煙などが発症の確率を上げると報告されています。
また、シャム猫はリンパ腫の発症率が高い猫種として知られています。
リンパ腫は、リンパ節から発生することが多いですが、リンパ球とリンパ組織は全身に存在するため、どの部位にも腫瘍ができる可能性があります。
猫のリンパ腫は、発生部位によって以下のようなタイプに分類されます。タイプごとに見られる症状が異なるのが特徴です。
胸の中(前縦隔部)に腫瘍ができ、リンパ節や胸腺が腫れることで、呼吸困難、胸水貯留、嚥下困難、吐出などの症状が見られます。
3〜6歳の比較的若い猫に多く、猫白血病ウイルス(FeLV)陽性の猫に多く発生します。
食欲不振や体重減少、嘔吐、下痢などが見られ、特に胃、小腸での発生が多いです。
10歳以上の高齢猫に多く見られ、前縦隔型と並んで発生割合が高いです。
全身のリンパ節が腫れるタイプで、犬ではよく見られますが、猫ではそれほど多くありません。
若い猫で発症することがあり、しこりや発熱などが見られることもあります。
中枢神経系、腎臓、皮膚、鼻腔など、リンパ節以外の臓器や組織から腫瘍が発生するタイプです。全体の発生割合はそれほど多くありません。
それぞれの部位に応じた症状が現れます。
たとえば鼻にリンパ腫が発生した場合(鼻腔リンパ腫)は、くしゃみ、鼻づまり、鼻血に加え、鼻や顔が左右非対称に変形してくることもあります。
猫の鼻腔リンパ腫には放射線治療が有効です。
猫のリンパ腫は、初期にははっきりとした症状が出にくいという特徴があります。
「最近なんとなく元気がない」「ごはんの減りが気になる」など、ちょっとした変化が最初のサインになっていることもあります。
猫はがんの中でもリンパ腫を発症しやすい動物です。
いつもと様子が違うと感じたら、「もう少し様子を見よう」とは考えず、早めに動物病院へご相談ください。
身体検査でリンパ節の腫れが見つかった場合や、高齢猫でリンパ腫の可能性が高い場合は、初めに細胞診という検査を行います。細胞診とは、細い針を組織に刺して細胞を採取する検査です。
体表のリンパ節(下顎、頸、鼠径等)に針を刺し細胞を採取するのは難しくありません。
肝臓や腎臓、腹腔内に腫瘍がある場合は、超音波で臓器や血管の位置を確認しながら針を刺して腫瘍細胞を採取します。
リンパ腫であれば、腫瘍化したリンパ球が多数採取されます。
この方法は超音波ガイド下経皮的生検と呼ばれ、開腹する必要がないため、体への負担が少なくて済みます。
一方で、消化器型リンパ腫が疑われる場合は、内視鏡を使って胃、腸の組織を一部採取し、病理組織診断を行います。
採取した細胞、組織の顕微鏡検査で腫瘍化したリンパ球が多数確認されれば、リンパ腫と診断できます。
また、リンパ球の腫瘍化を遺伝子解析、特殊免疫染色で検出する診断法も有用です。
他にも、血液検査で血液中に腫瘍化したリンパ球が出現していないかを確認したり、全身の状態を調べたりします。
さらに、FIVやFeLVのウイルス検査、縦隔の腫瘤や胸水、リンパ腫の肺への浸潤、その他腹部臓器の状態を確認するためのレントゲン検査も重要です。
これらの検査結果を総合的に考慮して、リンパ腫の診断を行います。
当院では、できるだけ猫の体への負担を少なくして診断することを心掛けています。
なお、診断の進め方は犬でもほぼ同様で、細胞診や超音波検査、内視鏡検査などを組み合わせながら、体に負担の少ない方法で診断を進めます。
リンパ腫は「血液のがん」と言われるように、全身に広がる性質を持っており、他の腫瘍のように手術で取りきるのは困難です。
そのため、猫のリンパ腫に対しては、抗がん剤を用いた「化学療法(化学的治療)」が治療の中心となります。
なお、この点は犬のリンパ腫も同様で、犬でも抗がん剤による化学療法が治療の基本とされています。
ただし、ごく一部の皮膚型リンパ腫で病変が限局している場合など、外科手術が選択されることもありますが、これはあくまで例外的なケースです。
化学療法にはいくつかの治療計画があり、猫の年齢、全身状態、リンパ腫のタイプや進行度(ステージ)、費用面などを考慮して最適なものを選択します。
抗がん剤治療と聞くと「副作用が心配」と感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、
リンパ腫に対する化学療法は比較的副作用が少なく、治療効果も期待できることから、犬でも猫でも広く行われている治療法です。
実際には、治療によるメリットのほうが圧倒的に大きく、早期から治療を始めることで症状の改善や延命が期待できます。
一方、抗がん剤を使わずに様子を見てしまうと、ほとんどのケースで病状が急速に悪化し、命に関わることも少なくありません。そのため、早めの判断・治療開始がとても大切です。
猫のリンパ腫のなかでも、鼻腔リンパ腫や皮膚リンパ腫、硬膜外リンパ腫など、病変が限局しているタイプでは、放射線療法(放射線を用いた局所治療)が効果的なことがあります。
特に鼻腔リンパ腫では放射線療法が第一選択となるケースも多く、早期に発見できれば、症状のコントロールや生活の質の改善が期待できます。
なお、放射線療法は犬のリンパ腫でも適応となる場合があり、とくに鼻腔や皮膚のリンパ腫など、病変が限局しているケースでは有効とされます。
猫のリンパ腫を予防するうえで、最も重要なのは、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)への感染を防ぐことです。
これらのウイルスは、感染した猫の唾液や血液などを介して広がるため、完全室内飼育が基本となります。
特に多頭飼育をしている場合、1頭が感染すると他の猫にも広がってしまうリスクがあるため、すべての猫を屋内で管理し、外猫との接触を避けることが大切です。
また、ウイルス感染以外が原因で発症するリンパ腫については、はっきりとした予防法が確立されていません。
そのため、日頃から定期的に健康診断を受け、体調の変化にいち早く気づけるようにしておくことが何より大切です。
猫は体調が悪くてもそれを隠すことが多く、「何となく元気がない」「食欲が落ちてきた」などの小さな変化が、病気のサインになっていることもあります。
少しでも気になることがあれば、「もう少し様子を見ようかな」とは思わず、早めに動物病院までご相談ください。
■関連する記事はこちら
・犬のリンパ腫について|リンパ球の悪性腫瘍、タイプ別解説
兵庫県尼崎市と伊丹市との境目、塚口にある動物病院 「しろうま動物病院」
病院案内はこちらから
当院では【お電話】または【WEB予約】にて診察予約を受け付けております。
📞お電話:06-6424-5616
💻📱 WEB予約はこちら
このページの先頭へ
Copyright © しろうま動物病院 Shirouma Animal Hospital All Rights Reserved.