前庭疾患
「頭が傾きふらついてうまく歩けない」「目が左右にキョロキョロと動いている」「急に吐いてしまった」そんな突然の変化に、思わず戸惑ってしまう飼い主様も多いのではないでしょうか。
これらの症状は、「前庭疾患(ぜんていしっかん)」と呼ばれる病気のサインかもしれません。
多くは自然に回復しますが、なかには注意が必要なケースもあるため、早めの気づきと対応が大切です。
このページでは、前庭疾患の原因や症状、治療、ご家庭でのケアについて解説します。
前庭疾患とは、体のバランス感覚をつかさどる「前庭(ぜんてい)」と呼ばれる神経系に異常が生じることで起こる病気です。
前庭は耳の奥にあり、姿勢を保ったり、体の向きを正しく認識したりするうえで、とても重要な働きをしています。
この前庭に障害が起こると、まるで車に酔ったときのように、ふらつき・めまい・吐き気などの乗り物酔いのような症状が、突然現れます。
特に10歳前後のシニア犬に多く見られ、前日まで元気だった愛犬が、翌朝にはふらふらと歩き回るようになった、というご相談をいただくことも少なくありません。
前庭疾患にはいくつかのタイプがあり、原因や重症度もさまざまです。
ここでは、代表的な原因を順にご紹介します。
最も多く見られるのが、この特発性前庭疾患です。特に10歳前後の老犬に多く、明確な原因が分からないまま、ある日突然、ふらつきなどの症状が現れます。
前庭の一時的な機能障害と考えられており、多くの場合は数日から1週間ほどで自然に回復します。
治ったあとも、軽く首を傾けたような状態が残ることがありますが、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
外耳炎が長引いたり悪化したりすると、炎症が鼓膜の奥まで広がり、中耳炎や内耳炎を引き起こすことがあります。
前庭神経は内耳の近くに位置しているため、そこに炎症が及ぶと、ふらつきや吐き気などの症状が現れます。
治療には、抗生物質の投与や耳の洗浄などが必要になります。
▼外耳炎についてはこちらで解説しています
より深刻なケースとして、脳の疾患が原因で前庭症状が出ることもあります。特に中枢性前庭疾患と呼ばれるタイプでは、左右対称に症状が現れたり、他の神経症状(痙攣、意識障害など)を伴ったりすることがあります。
このような場合には、CTやMRIなどによる精密な検査が必要です。
▼脳炎についてはこちらで解説しています
このように、前庭疾患の原因はさまざまですが、最も多いのは特発性前庭疾患です。
ただし、外耳炎などがきっかけとなって重症化することもあるため、耳のケアはとても大切です。
日頃から耳の中を清潔に保ち、異変に早く気づいてあげることが、前庭疾患の予防につながります。
前庭疾患には、ほかの病気と区別しやすい特徴的な症状が現れます。
次のような変化が見られた場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
◆ 眼振(がんしん)
目が水平や垂直方向に小刻みに揺れる状態です。いわば「目が回っている」ような感覚で、犬自身も混乱や不快感を覚えます。
◆ 頭が傾く
首をかしげたような姿勢や、じっとしているときにも首が傾いたままになることがあります。これは前庭系の異常を示す代表的なサインです。
◆ ふらつき・転倒・同じ方向にぐるぐる回る
まっすぐ歩けずにふらふらしたり、転んでしまったり、同じ方向に円を描くように歩くことがあります。バランス感覚の乱れが原因です。
◆ 嘔吐・よだれ
めまいや平衡感覚の異常から、まるで車酔いのような気持ち悪さを感じ、吐いてしまうこともあります。よだれが増える場合もあります。
これらの症状が一度に現れると驚かれるかもしれませんが、ほとんどのケースでは見た目の症状からある程度の診断が可能です。
より詳しい診断が必要な場合には、以下のような検査が行われます。
・耳の中(外耳・中耳)の状態確認
・神経の反応を調べる身体検査
・CTやMRIなどの画像検査(特に中枢性前庭疾患が疑われるとき)
これらの検査によって原因を明らかにし、症状にあわせた適切な治療を行うことが大切です。
前庭疾患の治療は、その原因によって方法が異なります。
ここでは、主な治療法とあわせて、ご家庭でできるケアについてご紹介します。
原因が特定できない「特発性」のケースでは、対症療法が中心となります。
具体的には、吐き気止めの投与や皮下点滴、安静を保つことで、自然な回復を促します。
目の動きやふらつきといった症状が徐々におさまってくるまで、焦らずにそっと見守ってあげることが大切です。
耳の病気が原因となっている場合は、まず炎症の治療を優先します。
耳の洗浄や抗生物質の投与、点耳薬の使用などを行い、炎症を抑えることで症状の改善が期待できます。
早めに治療を始めることが回復への近道です。
中枢性の前庭疾患が疑われる場合には、CTやMRIによる精密検査が必要です。
そのうえで、外科手術や放射線治療、免疫抑制剤などの薬など、原因に応じたより積極的な治療が行われます。
動物病院での治療とあわせて、ご自宅でのケアも回復を支える大切な要素です。
以下のような点に気をつけて、愛犬が安心できる環境を整えてあげましょう。
・動き回らないよう、静かで落ち着いた場所に安静を保つ
・転倒を防ぐため、床にクッションマットを敷く・サークルで囲う
・食欲が落ちている場合は、流動食や好みのフードで栄養補給をサポート
また、愛犬が不安そうにしているときには、やさしく声をかけてあげてください。飼い主様の存在が、何よりの安心材料になります。
Q.急に症状が出て驚いています。どうすれば良いですか?
A.まずは焦らず、愛犬を静かで安全な場所に移動させ、安静にさせてあげましょう。
特にシニア犬の場合は、「特発性前庭疾患」の可能性が高く、多くのケースで自然に回復していくことが知られています。
ただし、嘔吐が続いている、まったく立ち上がれないなどの症状がある場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。
Q.外耳炎と関係があるのですか?
A.はい、関係があります。
外耳炎が悪化すると、中耳や内耳まで炎症が広がってしまうことがあり、そこにある前庭神経が影響を受けて、前庭疾患を引き起こすことがあります。
愛犬が耳をかゆがる、耳の中が臭う、頭を振るなどのサインが見られたときは、早めに獣医師に相談するようにしましょう。
Q.治療で完全に治りますか?
A.特発性前庭疾患の場合、多くの犬は数日〜1週間ほどで自然に回復します。
ただし、症状が改善しない、悪化していくといった場合は、脳の病気などが関係している可能性もあるため、再診や追加検査が必要になることがあります。
症状の経過をよく観察し、気になる変化があればすぐに相談しましょう。
Q.予防方法はありますか?
A.すべての前庭疾患を完全に防ぐことは難しいですが、外耳炎の予防や早期治療はとても効果的です。
月に1回程度、耳の中の様子をチェックしたり、定期的に動物病院で健診を受けたりすることで、早期の異変に気づきやすくなります。
普段から耳を清潔に保つ習慣をつけておくと安心です。
前庭疾患は、愛犬にとっても飼い主様にとっても、突然のことで大きな不安を感じる症状かもしれません。
しかし、乗り物酔いのようなふらつきや吐き気が見られても、多くの場合は数日から1週間ほどで少しずつ回復していきます。
とはいえ、なかには中耳炎や脳の病気といった、しっかりと治療が必要なケースもあります。
「少しおかしいな」と感じたときには、できるだけ早めに動物病院に相談しましょう。
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