脳炎
脳炎とは、脳に炎症が起こる病気のことです。初期症状は軽く見えることが多いため、見過ごされやすいのですが、そのまま放置してしまうと重篤な症状へと進行する危険があります。
特に、てんかんと似たような症状を示す場合もあり、その区別が難しいケースも少なくありません。
犬の脳炎の原因はさまざまですが、自己免疫性の脳炎が多く見られます。一方で、原因が特定できない脳炎も多く存在しており、こうした病気への備えとして、正しい知識を持つことが重要です。
このページでは、犬の脳炎について、症状や注意点をわかりやすく解説します。
脳炎の初期症状は、疲労や軽い体調不良と見間違えやすい場合がありますが、早期に異変を見つけることが重要です。以下のような神経の障害が疑われるサインが見られたら、注意してください。
・食欲不振:普段楽しみにしている食事に興味を示さず、食べる量が減る。
・元気がない:いつも活発だった愛犬や愛猫が急に動きたがらなくなる。
・ぼんやりしている:呼びかけても反応が鈍く、普段と違うぼんやりとした様子を見せる。
・意識レベルの低下:簡単に目を覚まさない、何かをぼんやり見つめるなどの異常行動が見られる。
脳炎が進行すると、さらに深刻な神経症状が現れることがあります。次のようなサインを見逃さないことが大切です。
・体のふらつき:歩き方が不安定になり、転倒することが増える。
・ケイレン発作:てんかんのような体の硬直や、ケイレン発作が突然起こる。
・麻痺:四肢が思うように動かなくなり、歩けなくなる場合がある。
・視覚や聴覚の異常:突然目が見えなくなったり、音に全く反応しなくなったりすることがある。
脳炎の症状は進行性で、放置すると命に関わることもあります。特に、ケイレン発作や麻痺といった中枢神経に関わる症状が現れた場合は、緊急性が高いため、速やかに動物病院を受診してください。
早期発見と適切な治療が、脳炎による深刻なダメージを最小限に抑えるための鍵となります。
犬の脳炎は、症状だけで診断することが難しい病気です。そのため、正確に診断するにはいくつかの専門的な検査を行い、さまざまな角度から状態を詳しく調べる必要があります。
・MRI検査(磁気共鳴画像法)
脳炎の診断で最も重要とされるのがMRI検査です。この検査では、脳の詳細な画像を撮影し、炎症と考えられる部位の存在を確認します。MRIは非侵襲的で体に負担が少ない検査であり、脳の状態を細部まで把握するのに適しています。
また、腫瘍や脳梗塞など、脳炎と似た症状を引き起こす他の病気を区別する際にも非常に役立つ検査です。正確な診断を下すために欠かせない手法といえます。
・脳脊髄液検査
脳脊髄液とは、脳と脊髄を包む液体のことです。この検査では、その脳脊髄液の状態を調べ、細菌やウイルス、炎症性細胞などの異常がないかを確認します。採取した脳脊髄液を詳しく分析することで、脳炎の原因を特定できる場合があります。
ただし、この検査はやや侵襲的で実施には全身麻酔が必要なため、MRI検査を行った後に合わせて実施されることが多いです。
・血液検査
血液検査では、感染症や自己免疫疾患の有無を確認します。さらに、全身の健康状態を把握し、治療や全身麻酔に耐えられるかどうかを評価する目的でも行われます。
脳炎そのものを直接診断するための検査ではありませんが、病気の全体像を把握し、状態を総合的に判断するために欠かせない検査です。
脳炎の治療は、以下のようなケイレン発作と炎症を抑えることを目的とした薬物療法を中心に進められます。
・ケイレン発作を抑える薬物(抗てんかん薬)
脳炎に伴うケイレン発作には抗てんかん薬が有効です。ゾニサミド、フェノバルビタール、レベチラセタム等の薬剤が挙げられます。
・炎症を抑える薬物療法(ステロイド剤)
脳炎治療で最も広く使用されるのがステロイド剤です。この薬には強力な抗炎症作用があり、脳の腫れや炎症を迅速に抑える効果があります。
特に、症状が急速に悪化する場合に有効で、早期に投与を開始することで進行を抑えることが期待されます。
・免疫抑制剤(シクロスポリンなど)
自己免疫性の脳炎の場合、免疫抑制剤が治療に用いられることがあります。この薬は、過剰に働いている免疫系を抑制し、脳へのダメージを減らす作用があります。
ステロイド剤と併用することで治療効果が高まることが多く、長期的な管理にも適しています。
・抗がん剤
一部の抗がん剤(シトシンアラビノシド)は、中枢神経系への移行性が高く、適切な用量で使用することで免疫抑制剤に似た効果を発揮します。このため、治療の選択肢の一つとして検討される場合があります。
脳炎治療の主な目的は、神経症状(けいれん発作、麻痺、意識障害、運動障害等)の症状を和らげ、少しでも快適に生活できるようにすることです。治療中に症状が進行することもあるため、飼い主様と獣医師が継続的に連携することが非常に大切です。
脳炎は、症状がてんかんとよく似ているため、鑑別診断が難しい病気です。
てんかんではケイレン発作が主な症状ですが、抗てんかん薬のみで発作をコントロール出来ることが大半です。脳炎でもケイレン発作が起きますが、脳炎の場合、脳の炎症が原因のため、抗てんかん薬だけでは十分に改善しないことが多いです。
そのため、抗てんかん薬を使っても発作が治まらない場合は、脳炎の可能性も考えて早めに動物病院で詳しい検査を受けることが大切です。
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もし脳炎が疑われる場合には、ケイレンを抑える薬だけではなく、脳炎そのものを治療するための対応が必要になります。炎症を抑える薬や免疫を調整する薬などを使って、できるだけ早く治療を始めることが求められます。
ケイレン発作が見られた場合は急を要することがありますので、早めに動物病院にご相談ください。その際、けいれんの様子や回数を記録しておくと、診断に役立ちます。
Q:てんかんと脳炎の違いは見てわかりますか?
A:残念ながら、見た目だけでてんかんと脳炎を区別するのは非常に難しいです。両方ともけいれんやふらつきといった共通の症状が見られることがありますが、原因や治療法は大きく異なります。正確に診断するためには、MRI検査や脳脊髄液検査などの専門的な検査が必要です。
Q:脳炎は予防できますか?
A:現時点で脳炎を完全に予防する方法はありません。ただし、定期的な健康診断や普段の様子を注意深く観察することで、異常を早期に発見し、重症化を防ぐことができます。
特定の感染症(例:犬ジステンパーウイルス感染症)が原因となる場合は、予防接種が有効な場合もありますので、かかりつけの獣医師にご相談ください。
Q:どんな時に病院を受診すべきですか?
A:初期症状(元気がない、ぼんやりしている、ふらつくなど)が見られた時点で、早めに受診することが大切です。特に、けいれん発作が起きた場合は緊急事態と考え、速やかに動物病院に連絡してください。時間が経つほど症状が進行し、治療が難しくなる可能性がありますので、早めの行動が愛犬や愛猫の健康を守る鍵になります。
犬の脳炎は、進行性の病気であり、早期発見と早期治療が重要です。症状がてんかんと似ているため、自己判断で正確に診断するのは難しい場合が多く、MRI検査や脳脊髄液検査などの専門的な検査が必要です。
適切な治療を受けることで、症状の進行を抑え、愛犬や愛猫の生活の質を向上させることができます。普段と違う様子や体調の変化を感じた場合は、迷わず動物病院に相談しましょう。
兵庫県尼崎市と伊丹市との境目、塚口にある動物病院 「しろうま動物病院」
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