歩行異常
愛犬や愛猫がいつもと違う歩き方をしていると、心配になりますよね。
ちょっとした異変でも、飼い主にとっては不安を感じさせるものです。歩行の異常はさまざまな原因によって引き起こされることがあり、早期に気づいてあげること、そして原因に合わせた適切な治療を行うことがとても大切です。
このページでは、犬や猫の歩行異常について、その原因や症状、診断方法、さらに治療法まで詳しく解説します。
犬や猫の歩行異常には、さまざまな原因がありますが、特に、整形外科の問題や神経疾患がその大きな要因となります。ここでは、代表的なものをご紹介します。
・膝蓋骨脱臼
膝蓋骨(通称:パテラ)が正常な位置から外れてしまう状態で、特に小型犬に多く見られます。この脱臼が起こると、犬が後ろ足をスキップするように持ち上げたり、ガニ股で歩くような動きを見せたりすることがあります。
猫でも発症することがありますが、犬ほど一般的ではありません。
膝蓋骨脱臼についてはこちらで解説しています
・骨折
骨折による痛みが原因で、歩くことが難しくなることがあります。主な原因は高所からの落下、飛び降り、事故などです。骨折した場所をかばうため、歩き方に異常が現れます。足だけでなく、他の部位の骨折でも同様に歩行異常が見られることがあります。
橈尺骨骨折についてはこちらで解説しています
・前十字靭帯断裂
前十字靭帯は膝関節を安定させる重要な靭帯です。この靭帯が断裂すると、後ろ足の歩き方に異常が生じます。
犬に多く見られますが、猫では比較的まれです。
前十字靭帯断裂についてはこちらで解説しています
・股関節の異常(股関節脱臼、股関節形成不全、レッグペルテス)
股関節に異常がある場合、後ろ足の歩き方に特徴的な症状が現れることがあります。
股関節脱臼についてはこちらで解説しています
レッグペルテスについてはこちらで解説しています
・関節炎
関節に炎症が起きると、どの足でも痛みが生じ、歩くのが難しくなることがあります。特に高齢の犬や猫に多く見られ、手足をかばいながら歩く、動きがぎこちなくなる、猫ではジャンプ力が低下するといった症状が現れます。
変形性関節炎についてはこちらで解説しています
・椎間板ヘルニア
脊椎の間にある椎間板が飛び出し、脊髄(神経)を圧迫することで起こる病気です。この圧迫により神経障害(麻痺)が生じ、歩行が困難になる場合があります。
特にダックスフンドやフレンチブルドッグなどの軟骨異栄養性犬種やトイプードルに多く見られる疾患です。
椎間板ヘルニアについてはこちらで解説しています
膝蓋骨脱臼や股関節の問題では、主に後ろ足に症状が現れますが、関節炎の場合は前後どちらの足にも影響が出る可能性があります。
犬や猫の歩行に異常が見られる場合、前足と後ろ足で症状が異なることがあります。それぞれの特徴を見てみましょう。
・前足をかばう、浮かせるように歩く
痛みや違和感が原因で、前足を地面につけるのを避け、不自然な体勢で歩くことがあります。歩行中に片足を浮かせたり、かばったりするような動きが見られる場合、注意が必要です。
・肩や肘の動きがぎこちない
肩や肘に問題があると、歩行時に前足全体の動きが滑らかでなくなり、ぎこちない歩き方になります。
・スキップするように歩く
膝蓋骨脱臼などにより、片方の後ろ足を持ち上げてスキップするように歩くことがあります。時折、足を浮かせて歩く様子が見られたら、後ろ足に異常があるかもしれません。
・後ろ足を引きずる
椎間板ヘルニアや神経障害(麻痺)が原因で、後ろ足を引きずるような歩き方になることがあります。
・ジャンプができない
後ろ足に力が入らず、ジャンプや跳び上がる動作が困難になることがあります。
特に階段やソファに上がるのをためらうような行動が見られたら、注意が必要です。
・段差を上がれない、降りられない
後ろ足に力が入らないため、階段や段差を上ったり、降りたりする際に動作が遅くなることや、ためらう様子が見られます。
これは前足の異常がある場合にも見られることがあります。
・後ろ足を広げて歩く
股関節に問題があると、後ろ足を広げた状態で不自然な歩き方や、腰を振るような歩き方をすることがあります。
これらの症状が見られたら、早めに獣医師に相談して、適切な治療を受けることが非常に重要です。
犬や猫の歩行に異常が見られる場合、診断には以下のような検査が行われます。
・触診
まずは、獣医師が手で直接体に触って診察します。筋肉や関節、骨の状態を確認しながら、痛みや腫れ、動きに異常がないかを丁寧に調べていきます。この触診は初めの段階でとても重要で、その後にどのような検査を進めるかを決める手がかりとなります。
さらに、院内で実際に歩いてもらい、その動きを観察することで、どのような異常があるのかを詳しく見ていきます。
・神経学的検査
神経学的検査では、中枢神経や末梢神経、骨、筋肉の状態を詳しく調べます。特定の動作や姿勢を取らせたり軽く刺激を加えたりすることで、痛みや異常な動き、反応があるかを確認します。
これにより、どの部分に問題があるかをより正確に特定することができます。
・レントゲン検査
レントゲン検査は、骨や関節の異常を確認するために行います。骨折や関節炎、脱臼など、骨に関係する問題が疑われる場合に非常に有効です。骨や関節の変形や損傷をしっかりと把握できるので、治療の方針を決める際に大変役立ちます。
また、触診や神経学的検査だけではわからなかった異常を見逃さないためにも、レントゲン検査が重要です。
・CT/MRI検査
CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)は、骨だけでなく、脳や筋肉、神経、軟部組織などの詳細な画像が確認できます。椎間板ヘルニアや神経障害など、複雑な疾患の診断に非常に役立ちます。
これらの診断を組み合わせることで、犬や猫の歩行異常の原因をより正確に見極め、適切な治療へとつなげることができます。
歩行異常の治療では、まずその原因となる疾患(膝蓋骨脱臼、骨折、前十字靭帯断裂、股関節脱臼、椎間板ヘルニアなど)に対して、適切な治療を行うことが重要です。
軽度の場合は、消炎鎮痛剤を使用して痛みを和らげ、安静にすることで症状が改善することがあります。
一方で、重度の場合は手術によって膝蓋骨がしないように固定し、正常な歩行ができる状態にする治療が必要です。
骨折の治療には、骨を正しい位置に固定するための外科的手術が必要です。プレート、創外固定、髄内ピンなどを使用して骨を固定し、骨折を直します。
軽度の骨折であれば、ギプスや包帯による固定で行われることもあります。
前十字靭帯断裂の場合、重度であれば手術が必要です。外科的治療にはいくつかの方法があります。
小型犬で軽症の場合は、安静やリハビリテーション、鎮痛剤による内科的な治療が選ばれることもあります。
股関節脱臼の治療では、まず手動で脱臼した関節を元に戻す「整復」が行われます。
しかし、改善が見られない場合や再発のリスクが高い場合には、外科手術による「骨頭切除術」または「股関節全置換術」を検討することがあります。
椎間板ヘルニアが軽度の場合は、安静にすることや、抗炎症薬や鎮痛薬を使用して症状を緩和するのが一般的です。
重度の場合は、神経の圧迫を軽減するために外科的手術が必要になることがあります。
これらの治療法は、病状の進行具合や犬や猫の全体的な健康状態に合わせて、最適な治療法が選択されます。
犬や猫の歩行異常を予防するためには、日頃から愛犬や愛猫の歩き方をよく観察することが大切です。
もし、いつもと違う歩き方をしている場合は、できるだけ早く動物病院に相談しましょう。特に、神経の麻痺が疑われる場合は、早めの治療が必要です。
ご家庭では、滑りやすい床や高い場所からの落下を防ぐように環境を整え、定期的な健康診断を受けることが、歩行異常の予防につながります。
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