口腔腫瘍
口腔腫瘍とは、口の中にできる腫瘍のことを指します。
口腔内は良性・悪性を問わず腫瘍が発生しやすい場所であり、食事に支障をきたすことが多いため、愛犬や愛猫の生活の質にも大きな影響を与えます。
このページでは、犬と猫の口腔腫瘍について詳しく解説します。
口腔腫瘍の主な原因は、他の腫瘍と同様に明確にはわかっていません。
しかし当院の経験から、ひどい歯周病があると腫瘍が発生しやすい傾向が見られるため、口腔内の炎症が口腔内腫瘍の発生に関与している可能性があると考えています。
犬の口腔内で最も多く見られる悪性腫瘍は、メラノーマ(悪性黒色腫)、扁平上皮癌、線維肉腫で、歯肉、舌、扁桃腺に形成されることが多いです。
一方、猫で多くみられる悪性腫瘍は扁平上皮癌や線維肉腫で、こちらも歯肉、舌、扁桃腺に形成されます。
犬で発生の多いエプリスは歯肉にできる良性の腫瘍で、見た目は歯肉が盛り上がった「しこり」のように見えます。
特にエプリスの一種である棘細胞性エナメル上皮腫は転移しないため良性とされていますが、顎の骨に広がることがあり、これが原因で食事がしにくくなったり、出血したりすることがあります。このような症状は悪性腫瘍と似ているため、注意が必要です。
口腔内腫瘍は初期では無症状ですが、進行するにつれて以下の症状が現れます。
・口腔内の痛み
・口臭
・流涎 (多量のよだれ)
・口や鼻からの出血
・食べ方の変化
・嚥下困難 (水を飲む時にむせるなど)
・体重が減る
・元気や食欲の低下
腫瘍が大きくなると顔の骨が変形し、目が飛び出るなどの変化が見られることがあります。
また、顎の骨に腫瘍が広がると、顎の骨が折れたり、口を開けにくくなったり、強い痛みを感じます。
特にメラノーマという腫瘍は進行すると肺に転移することが多く、呼吸困難が見られる場合もあります。
口腔内腫瘍の診断はまず、口の中を詳しく観察することから始まります。
口腔内腫瘍に似た症状を示す病気として、歯肉過形成、歯周炎、口内炎、骨髄炎、根尖周囲膿瘍などがあり、それらと区別するための鑑別診断を行います。
口腔内腫瘍が疑われる場合、以下のような検査を行います。
・細胞診検査:腫瘤に針を刺して細胞の一部を採取し、観察します。
・病理組織検査:腫瘤の一部を切除して詳しく調べます。
・領域リンパ節の触診および細胞診検査:リンパ節への転移がないかを確認します。
・胸部レントゲン検査:肺への転移を評価します。
また、口腔内腫瘍の治療は外科手術による摘出が基本です。そのため、手術前の全身評価のために以下の検査が必要です。
・血液検査:全身の健康状態を確認します。
・腹部超音波検査:内臓の状態を詳しく調べます。
・CT検査:腫瘍が周囲の組織にどの程度浸潤しているかを詳細に評価します。
口腔内腫瘍の治療の基本は外科手術で腫瘍を切除することです。
腫瘍が一部にある場合は手術で取り除くことが最も確実な治療法です。しかし、口腔内の悪性腫瘍は周囲の組織や顎の骨に浸潤していることが多いため、完全に取り除くには周囲の組織や顎の骨も含めて切除する必要があります。
放射線治療には、外科手術と組み合わせて確実に根治を目指す方法や、腫瘍の縮小や局所の状態をコントロールする方法など、さまざまなアプローチがあります。そして、これらの方法は、愛犬や愛猫の状態や腫瘍の場所、大きさ、浸潤具合を考慮しながら、最適なものを選びます。
化学療法(抗がん剤治療)も外科手術と組み合わせて行うことが多く、特に犬のメラノーマのように遠隔転移の可能性が高い腫瘍には効果的です。
しかし、化学療法だけでは生存期間を大幅に延ばすことは難しいため、まずは腫瘍を手術で摘出することが何よりも大切です。
免疫療法は、動物の持つ免疫力を利用して腫瘍細胞を攻撃する新しい治療法です。現在、犬のメラノーマで臨床研究が進められており、今後の成果が期待されています。
口腔内腫瘍を完全に予防する方法はありませんが、普段から歯磨き等を行い、愛犬や愛猫の口腔内を観察する習慣をつけることで、早期に異常を発見することができます。また、愛犬や愛猫がご飯を食べる様子を注意深く見て、食べづらそうにしていないか確認することも重要です。
もし、口の周りのできものや、食べづらそうにしている様子を発見した場合は、すぐに獣医師に相談してください。早めの対応が、健康を守る第一歩です。
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