子宮蓄膿症

犬と猫の子宮蓄膿症について|避妊手術で予防できる病気の1つ

子宮蓄膿症は子宮内に細菌が感染し、膿が溜まってしまう病気です。
この病気は、避妊手術を受けていない中高齢の雌犬や雌猫に多く見られます。発見や治療が遅れると命に関わることもあるため、早めの対応が重要です。

このページでは、犬と猫の子宮蓄膿症について詳しく解説します。

原因

子宮蓄膿症の「蓄膿(ちくのう)」とは文字通り膿が溜まる状態を指します。人間で蓄膿というと慢性副鼻腔炎のことを指すことがありますが、犬や猫では子宮蓄膿症がよく知られています。

子宮蓄膿症の原因は、卵巣から放出される黄体ホルモン(プロゲステロン)が関係していると考えられています。
犬は生後12ヶ月ごろまでに性成熟を迎え、その後は年に1〜2回のサイクルで発情を繰り返します。雌犬の発情周期は生理が見られる「発情前期」、交尾を行う「発情期」、妊娠・出産などを行う「発情休止期」、次の発情まで発情行動が見られない「無発情期」の4つのステージに分けられます。

犬はいつでも子宮蓄膿症になるわけではありません。子宮蓄膿症になる時期は発情期の後の「発情休止期」です。この時期に多く分泌される黄体ホルモンによって子宮内の免疫が低下し、子宮内膜が肥厚することで細菌感染を起こしやすくなります。発情が終わってからしばらく後が要注意です。

症状

子宮蓄膿症の症状はさまざまですが、主に発熱、元気や食欲の低下、陰部からクリーム状の膿が漏れ出すなどの症状が見られます。

開放性子宮蓄膿症では、子宮の中に溜まった膿が外陰部から漏れ出しているため、飼い主様が症状に気づきやすく、膿が過剰に溜まることが少ないため症状は比較的軽いです。この場合、元気や食欲の低下、多飲多尿などの症状が多く見られます。

大きな問題となるのは閉塞性子宮蓄膿症で、膿が外陰部から外に出でず、子宮の中に溜まり続けます。このため、子宮が一部破れ、膿が腹腔内に漏れ出し、腹膜炎や敗血症を引き起こすこともあります。閉塞性子宮蓄膿症は、飼い主様が異変に気づいた頃にはすでに重症化しているケースも少なくありません。
症状としては、発熱、多飲多尿に加えて、ぐったりしている、下痢や嘔吐、お腹が膨らんでいる、意識レベルの低下などが見られます。

子宮蓄膿症は治療が遅れると命を失うこともある恐ろしい病気ですので、上記のような症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。

診断方法

子宮蓄膿症が疑われる場合、視診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を実施します。

視診:全体的な身体検査を行い、腹部や陰部の腫れ、陰部からの排膿、排尿の状態などを確認します。

血液検査体内に炎症が起きている時に上昇するCRP(C-リアクティブプロテイン)や白血球数の結果が重要です。子宮蓄膿症では高い値を示します。

・レントゲン検査、超音波検査:子宮の腫れや内部の状態を評価します。これにより、子宮内の膿の量や子宮の肥大具合などを詳しく調べることができます。

治療方法

子宮蓄膿症の治療は主に外科手術です。手術では膿が溜まった子宮を全摘出します。この手術では同時に卵巣も摘出し、卵巣子宮摘出術(OHE)として行うことで、将来の卵巣疾患の予防も兼ねることができます。子宮蓄膿症は外科手術で完治が期待できる病気です。

将来繁殖を考えている場合や、すぐに手術を実施できない場合には、抗生剤の投与や点滴等の内科療法を行うことがあります。しかし、これらはあくまでも対症療法であり、再発することが多いので、根本的な治療とは言えません。

予防法やご家庭での注意点

子宮蓄膿症は避妊手術をしていない中高齢の犬や猫の発症リスクが高いため、繁殖を考えていない場合は早期の避妊手術を強くおすすめします。早期の避妊手術は、子宮蓄膿症だけでなく、将来の卵巣疾患の予防にもなります。

当院の避妊手術については外科手術のページでも解説しています

子宮蓄膿症は発見が遅れると命に関わることもありますが、適切に治療すれば完治する可能性も高い病気です。
犬の場合、発情期の後の発情休止期に起こりやすいのが特徴ですが、猫の場合は発生時期がはっきりしないため、特に注意が必要です。
発熱、多飲多尿、陰部から膿が出ているなどの異変を感じたら、すぐに動物病院で診察を受けるようにしてください。

まとめ

子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まり、命を奪うこともある恐ろしい病気ですが、避妊手術を受けることで完全に予防することができます。

子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍の予防も考慮すると、初回発情を迎えるおおむね生後6ヶ月ごろから1歳くらいまでの間が避妊手術の理想的なタイミングです。
もし避妊を検討している場合は、ぜひ当院のスタッフにご相談ください。

■当院の関連する記事はこちらで解説しています
犬と猫の乳腺腫瘍について┃避妊手術で発症の確率を軽減

兵庫県尼崎市と伊丹市との境目、塚口にある動物病院 「しろうま動物病院」
病院案内はこちらから

pagetop

このページの先頭へ

Copyright © しろうま動物病院  Shirouma Animal Hospital All Rights Reserved.