変形性関節炎

犬と猫の変形性関節炎について|老化現象と見過ごさないで!

変形性関節炎は、年齢を重ねるにつれてクッションの役割を果たす軟骨が変性したり、すり減ったりすることで、関節に炎症が生じて痛みを感じる病気です。
この病気は人間だけでなく犬や猫にも見られ、特に12歳以上のシニア猫のほとんどが変形性関節炎を患っているという報告もあります。


このページでは、犬と猫の変形性関節炎について詳しく解説します。

原因

基本的に、変形性関節炎は加齢によって引き起こされるものです。
年を重ねるにつれて、軟骨の変性や関節構造が慢性・進行的に変化し、これによって関節軟骨が損傷したり、新しい骨や骨棘が生じたりすることで痛みが発生します。
また、以下の要因も関節に異常な負担をかけることで、変形性関節炎のリスク因子となります。

・肥満や滑りやすい床(関節への負荷が高まります)
・骨格の歪み(関節に不均等の負荷が加わります)
・股関節形成不全や前十字靭帯損傷、膝蓋骨脱臼などの整形疾患

軟骨や関節構造の変化は不可逆的(元に戻せない)ため、早期発見・早期治療を徹底し、症状が軽度なうちに進行を遅らせることが非常に重要です。

症状

変形性関節炎の初期段階では、わずかに関節に痛みを感じる程度なので、飼い主様も老化の一部と思って気付かないことがほとんどです。特に猫の場合、犬に比べて痛みのサインが分かりづらいため、さらに病気の存在に気付くことは難しいでしょう。

しかし、症状が進行すると痛みも強くなり、以下のようなサインが見られるようになります。

・足をかばって歩く、歩くのが遅くなる
・散歩に行きたがらない、散歩の時間が短くなる
・今まで登れていた高さに登れなくなる
・ジャンプや遊びが減る
・寝起き後しばらく動きが悪く、動いているうちに動きが良くなる
・抱き上げたときに鳴いたり、怒ったりする


これらの症状は全て関節に痛みを感じるために現れるものです。関節炎は無治療で改善することはなく、日常的な動作で痛みを感じるようになるため、ペットの生活の質が大きく低下してしまいます。そのため、早期に痛みに対するケアを行うことが必要です。

診断方法

変形性関節炎の診断は、問診や身体検査、関節のレントゲン検査、関節液検査などの結果を総合的に判断して行います。


問診と身体検査:年齢やご自宅での様子、関節を曲げたときの痛みの有無、歩き方の様子などを確認します。


関節のレントゲン検査:変形性関節炎のメインとなる検査です。関節周囲に炎症が起きていないか確認し、骨折や脱臼などの隠れた病気がないかを、調べることができます。


関節液検査:追加の検査として、関節の中に含まれる滑液という液体を注射器で採取し、炎症細胞や細菌の有無を検査する場合があります。

治療方法

変性した軟骨成分や構造は修復されませんが、無治療で放置すると炎症はさらに悪化し、痛みも強くなります。そのため、これ以上炎症を悪化させないように内科治療によって疼痛管理を行い、補助的にサプリメントを使用することもあります。


近年、変形性関節炎の疼痛管理には、犬、猫とも効果と安全性を高めた新薬が複数登場しています。抗NGFモノクローナル抗体薬と呼ばれる1回で1カ月鎮痛作用が持続する注射薬や、EP4拮抗薬と呼ばれる次世代の鎮痛薬が高い効果をあげています
また、関節軟骨の修復を助ける注射薬(ポリ硫酸ペントサンナトリウム)や非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などの従来の鎮痛薬を使用することもあります。

また、補助的なサプリメントには関節軟骨の成分や消炎作用のあるものを用います。

予防法やご家庭での注意点

変形性関節炎は加齢が主な発症要因であるため、完全に予防することは難しいでしょう。しかし、肥満を防ぐことや床を滑りにくくするなど、少しの工夫で発症リスクを低減させることができます。

ただの老化現象として見過ごさず、変形性関節炎の存在に気付くことが大切です。そして、正しい治療を早期に始めることで、愛犬や愛猫の生活の質を維持することができます。

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