てんかん
人の病気として有名な「てんかん」ですが、実は犬や猫もてんかんになることがあります。
てんかんとは何らかの原因により、不定期に繰り返し発作が起きてしまう脳の慢性的な病気です。
このページでは、犬と猫のてんかんの原因や症状、診断方法、治療方法などについて詳しく解説します。
てんかんは,、原因によって大きく3つに分けられます。
血液検査、尿検査、MRI検査等を行っても脳に異常が見つからず、発作の原因が遺伝的な要因以外には考えにくい場合に診断されます。犬で特に問題となるのが特発性てんかんです。
脳腫瘍、脳炎、脳腫瘍、脳出血、頭部外傷の後遺症など、脳の構造的な異常や病気が直接的な原因となって発作が起こります。
腎臓病や肝臓病、低血糖など脳以外の病気が発作を引き起こす原因となることがあります。
例えば、熱中症で体温が異常に高くなった場合や、何らかの中毒状態が発生した場合に、二次的にけいれん発作が見られることもあります。
てんかんの代表的な症状はけいれん発作です。意識を失いながら全身がピンと突っ張ってけいれんする「強直性けいれん発作」、全身がガクガクけいれんする「間代性けいれん発作」などがあります。
必ずしも意識を失う訳ではなく、意識がある状態で口をカチカチ動かす、一本の足だけがピクピク動くような部分発作や、尿失禁などの自律神経徴候など様々な症状が見られます。
そして、発作で意識を失っても通常は数秒〜数分で落ち着き、そのあとは何事もなかったようにいつも通り過ごすこともあります。
てんかんのけいれん発作は通常2〜3分以内に自然に収まりますが、けいれん発作が5分以上続く場合や、一つの発作が収まる前に次の発作が始まる場合は「てんかん重積」と呼ばれる状況です。
てんかん重積は非常に危険な状態で、脳の神経細胞に不可逆的なダメージを与え、最悪の場合は死に至ることもあります。
診察中に発作を直接見る機会は少ないため、基本的には飼い主様からの問診を通じて状況を確認したうえでてんかんを疑います。この時にけいれん発作の様子を記録した動画があれば診察で非常に役立ちます。
けいれん発作は大まかに分けると、脳神経の異常と、脳神経以外の要因で起こる場合とがあります。
まず身体検査と、血液検査等で全身状態を確認し、脳神経以外の要因である、心臓病、低酸素状態、中毒、低血糖、電解質バランス異常、肝不全、尿毒症など、各種機能の異常が発作の原因になっていないか考えます。
脳や脊髄を含む中枢神経系の状態を確認するためには、神経学的検査を行います。構造的てんかんの場合はここで異常が見つかることが多くあります。
そして、脳神経の異常が疑われた場合はMRI検査、脳脊髄液検査などを行い、炎症、腫瘍、血管障害などを詳しく調べます。MRI検査と脳脊髄液検査は全身麻酔をかけて行う検査です。
MRI検査は脳の炎症や脳血管障害、腫瘍の有無などをより詳細に評価できるため、てんかんの診断において非常に重要な検査です。
上記全ての検査で異常が認められず、けいれん発作を繰り返している場合は特発性てんかんと診断されます。
一方で、MRI検査で脳に炎症があれば脳炎によるてんかん、腫瘍があれば脳腫瘍によるてんかんと判断できます。
てんかんの基本的な治療法は抗てんかん薬という、てんかんの発作頻度を抑える薬を服用することです。抗てんかん薬は発作が起こった時だけ服用し、収まったらやめるといった方法ではなく、発作が無い時から常用することで、未来の発作を抑えていくものです。
抗てんかん薬の使用で多くの場合は発作が起きなくなる、あるいは発作の回数を大幅に減少させることができます。
犬や猫にも適用可能な抗てんかん薬は複数の種類があり、それぞれ特性が違います。健康状態、発作の程度、および副作用のリスクを考慮して、適切な薬を選択します。
けいれん発作が連続し収まらなくなった状態の「てんかん重積」は緊急事態で、速やかに発作の連鎖を断ち切る必要があります。常用している抗てんかん薬のみでは抑えられないので、抗てんかん薬の注射薬の静脈投与による強力な治療を集中的に行います。てんかん重積時は可能な限り速やかに病院で治療を受けることが推奨されます。
さらに、けいれん発作の原因が脳炎や脳腫瘍などの特定の疾患にある場合は、抗てんかん薬の投与に加えて、ステロイド剤の投与、放射線照射等、これらの根本的な原因に対する治療も同時に行います。
てんかん持ちの犬や猫が無治療のままでいるケースも見られますが、てんかんを発症したら早めに適切な診断を受けて、日頃から抗てんかん薬でコントロールすることが重要です。
最近の抗てんかん薬は効果が高く、副作用も以前に比べて少ないため、積極的に治療を行うことをおすすめします。
ご家庭での発作時の対処法として、以下の点に注意してください。
発作を起こしたら無理に抱き抱えずに、柔らかい布団の上など安全な場所で発作が収まるのを静かに待ちます。通常、発作は数分以内に自然と止まります。
発作の様子をスマートフォンで録画すると良いでしょう。録画した動画は発作の持続時間を確認できるため、正確な診断を下すのに役立ちます。
夜間や休日にてんかん重積が起きた場合の対応を事前に計画しておくことが重要です。かかりつけの獣医師と相談し、緊急用の抗てんかん薬や、夜間対応可能な獣医病院の情報を把握しておくと安心です。
抗てんかん薬は血中濃度を一定に保つことが重要なため、飼い主様の判断で薬を休むことなく、獣医師の指示に従って投薬を続けてください。
犬や猫のてんかんは繰り返し発作を引き起こす脳の病気で、残念ながら完治する病気ではありません。
しかし、抗てんかん薬を使って発作の頻度や症状の程度をコントロールしていけば、普段通りの生活を送ることも可能です。
そのため、愛犬や愛猫の様子が普段と違う場合や、発作と思われる症状が現れたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
兵庫県尼崎市と伊丹市との境目、塚口にある動物病院 「しろうま動物病院」
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